『私、初めてなの』
「オイ・・」
「!!?」
俺が話し掛けると二人(どうせ又コピー野郎だろうが)は一斉に振り返った。二人とも疲れきった表情で憎しげに俺の顔を睨みつける。へえ・・これはまた、今回は迫真に迫った演技じゃねえか。だが・・もう騙されないぜ
「アンタ・・本当にくえすと・・?」
「さあ・・な?それはお前等が一番分かっているだろう・・このクソ偽野郎が」
「・・姉さん。これも偽者よ・・くえすと様はこんなに歪んだお顔をなされていない」
「ハ!どうだかね!!偽者だろうが本物だろうがコイツの顔はこんなもんよ!」
「・・・オイ。言ってくれるじゃねえか偽者。お前も中々の演技だがな、本物のアイツはもっと下品な媚顔をしているぜ?・・まだまだ修行不足だな。」
「プチ・・・下品・・ですって・・?それは私をモンバーバラが生んだ奇跡のダンサー、町を歩けば誰もが振り向く、オトコを狂わすセクシーガールのマーニャさんと知っての・・暴言かしら・・・・?」
「ハハハハ!!奇跡のダンサー?美貌?勘違いも甚だしいな!それはスケベな野郎限定だろう!!少なくとも俺に取ってみればお前は単なる色ボケの姉ちゃんなんだよ!!笑わすぜ・・全く、そういう勘違いな所は本物ソックリだな!」
「アンタ・・それ以上言うと・・燃やすわよ?」
「やってみな・・・姿性格までは立派にコピー出来ているようだが・・あいつの狂ったような魔力はコピー出来ないだろうよ・・」
「へえ・・・言ってくれる。まあこれであたしもアンタが偽者だって確信出来たわ。アイツはあたしがキレたらどんなに怖いかよーく分かっているカラネ・・」
「あー、良くわかってるぜ。アイツはキレたら目が怒りの炎に包まれるからな・・でもお前はそこまで似せる事が出来なかったようだな。」
「フフフ・・だって・・これから見せるんだもの・・」
「ハッタリはそこまでにしておきな・・今切り刻んでやる」
「 ふ ふ ふ ふ 」
・・不敵な笑みを浮かべていた偽マーニャの双眸が赤く燃え出した・・・なに?赤く・・・・燃え・・・・?
我、炎の精霊の御霊を欲する者なり。
・・・呪文を詠唱し始めやがった・・・これは・・
我、炎の精霊の加護により業火にて・・
・・何か・・温度が高くなってきている・・ような。・・マサカ。
ザーザース・ザーザース・・・・・・聞け、我の声を・・
!!熱ッ!間違いない!こいつは・・本物だ! しかもショートカットしてやがるし!!ヤバイ!!
「ま・まて!俺は・・俺も・・本物だ!落ち着けマーニャ!!」
う ふ ふ ふ ・ ・ も う 遅 い わ ・ ・ ・・我はマーニャ。炎の精霊と契約せし者、マーニャ。
120%キレてる・・もう駄目だ!!こうなったら!!
我、ここに命ずる!この愚者を・・紅蓮の炎で焼き、払えッ・・!!
ぐ!間に合え!
メ ラ ・ ゾ ー m
さくっ
ウ・・
ばたっ
ふ・ふう、あぶねえ、間一髪で間に合った・・マーニャは取りあえず気絶しただけだ心配は無い・・筈。それにしても、「a」が入ってたら間違いなく焼死するとこ・・
「ね・姉さん!!しっかり!姉さん!!・・・ダメ・・気絶している・・」
「ミネア・・悪かった。疑った俺が悪かった。お前等は本物だ・・でも俺も本・・」
「ゆ・許さないわ偽者!覚悟しなさい!!」
「落ち着け!俺も本物だ!マーニャは・・」
大いなる風の精霊よ・・我は契約者ミネア。風の刃にてこの敵を切り刻め・・バ
「く!」
俺は(またしても)疾風の如く駆け、ミネアに真正面から覆い被さった!
「な!離し・・離しなさい!」
「聞いてくれミネア!」
「聞かない、絶対聞かない!離して・・離せえ!」
「聞け、ミネア!落ち着いて考えてみろ!偽者だったらこの隙に既にお前を切り刻んでいるだろ!!」
「・・くえすと様は女に抱きつくなどと言う不埒な真似は致しません!!」
「ミネア・・信じてくれ。」
「だめ・・信じられない。それにあなたは姉さんを襲った。それがなによりの・・」
「マーニャは峰打ちだよ。安心しろ。」
「・・・。」
「ミネア・・どうしたら俺を信じてくれる・・?」
「だから信じません・・そうやって私たちを・・何度も、何度も、騙して・・」
「・・この天空の印を見ても信じられないか。」
「・・・・・。」
「・・そうか。じゃあ」
「あ・・」
俺はミネアから離れ、大の字になって寝転がった。
「俺を殺せよ。打撃なり呪文なりで殺したらいい。」
「な・・・」
「俺は偽者なんだろう・・?なら殺せよ。」
「そ・それこそ本当のくえすと様ならそんな事は言いません!この旅の重さは一番くえすと様が分かっているはず・・!!」
「その気にさせてくれたのが君たちだからな。感謝しているからこそ出来る。」
「・・・・。」
「これで君たちに疑われたままならこれ以上・・」
「・・失礼致しました勇者様・・」
「分かってくれたか・・?」
「申し訳ありませんでした。愛する人を殺せるはずがありませんわ。」
「・・・は?」
「くえすと様も私の事を一番愛しているからこそ、私の事を信頼してこんな行動に出たのでしょう?さあ・・」
「何・・?」
「さあ、お立ちになってくえすと様」
「・・・。」
「・・?どうなさいました?」
「悪いな。俺が愛するのは後にも先にもシンシア一人だ。」
「・・・・・。」
「生きていようが死んでいようが、あいつだけだ。」
「・・・・・。」
「・・・・・。」
「・・・・・。」
「・・・・・。」
「・・はい。貴方は間違いなくくえすと様ですね。」
「・・試したな」
「申し訳ありません試すような事をしてしまって・・」
「・・いや。」
「でも・・!!どうしてあんな事いったんですか!殺せ・・だなんてあんな事!もし私が疑ったままならどうするつもりだったんですか!!」
「・・いや、それは。」
「・・・・・。」
「・・なんとなく。」
「な・なんとなく・・ですって!!」
「・・なんとなく信じてもらえるような気がしたからな。」
「・・・む・・滅茶苦茶です!もうあんな事を言わないで下さいね!!」
「わかった」
「・・・・。」
「悪かった。謝るよ怒らないでくれ」
「・・・。」
「おい・・」
「・・もう怒ってません・・」
「いや、まだ怒ってるだろ。身体が震えている。」
「・・・・・・。」
「顔だって真っ赤だ。いかにも怒り心頭って顔だよ。」
「・・私・・。」
「うん、なんでも聞くよ」
「私、は・・。」
「うん」
「・・・。」
「どうした?今回は俺が悪かった、だから何でも言って・・」
「・・男の方に抱かれたのって初めてなんです」
「ぶっ!!」
「・・・。」
「いや・・。」
「・・・。」
「おい冗談はよせミネア・・。」
「・・ぐす」
「〜〜〜〜っ!!だってな〜!しょうがないだろ!あのままだったら君は間違いなくバギで俺を切り刻ん・・」
「ぷ――っ!!冗談です!あはは!くえすと様、顔が真っ青!」
「おまえなあ・・」
「あははは!御免なさい!」
「う・う〜〜ん・・はっ!こ・の!偽者ぉ!!ミネアから離れろ〜〜!!」
「あ、姉さん気がついた?」
「な・なに呑気な事いってるの!!早く、早くその偽者を―――」
「この方は本物のくえすと様ですわ。本物の勇者様。私が保証します。」
「・・ヘ?」
「よう、マーニャ。」
「よう、マーニャ。・・じゃないわよ!なによ――!!本物なら証拠を見せなさい、証拠を!!!」
「・・ミネアだから信じられたけどお前なら本当に殺しそうだからな・・我はマーニャ・・愚者を紅蓮の業火で焼き尽くせ・・!!ってな。」
「・・プ!あはは、アハハハハハ!!」
「え?え?え?え?」
「証拠は無いよ。信じてくれとしか言えない。俺はお前等を信じたよ。」
「・・・。」
「お前等も相当大変な目に遭ったんだろ?・・疑うのは分かるけどな、俺はたった一人で戦ってたんだぜ?もう止めにしよう・・疲れた。」
「・・・どう・・やら本物見たいね・・分かった。あたしも信じる。」
「一件落着ですね!さあ、先に進みましょう、今度は三人はぐれないように!」
「・・ミネア。」
「なあに?」
「・・あんた、何か異様にテンションが高くない?何か遭った?」
「ん?いえ、何も―――あ、くえすと様に抱かれました。」
「!!!??????」
「な――――――――なあああ!!?くえすとォ!あんたぁぁぁ!?」
「ち・違う!ミネアを抱いたのはしょうがなく・・
「 し ょ う が な く ? 」
「そうだ!仕方なく抱いたんだ!だってああしなければ・・」
「 仕 方 な く 抱 い た ? 」
「じゃなくて!!・・・おいお前・・眼が赤いぞ・・じょ・冗談じゃねえ・・!!おい、ミネア!!」
「フフフ!!姉さん、冗談です!」
「 ・ ・ ほ ん と う ? 」
「本当、本当!!ね、くえすと様?」
「・・・・・・もういい・・行くぞ・・・疲れた・・・」
「・・ちょっと待ちなさい。」
「もういいだろう!?ミネアだってああ言ってるだろうが!」
「それはもういいわ。それより・・さっきはよくもあたしをぶん殴ってくれたわね」
「お前・・この期に及んでまだそんな事」
「痛いのよ・・鳩尾がジンジン痛いの。」
「いい加減に・・」
「どうしてくれるのよ・・・」
「・・ふう。」
「・・・・・。」
「お前なああああ!!!!いい加減にしろよー!!
と言う感じでその日一日中くえすととマーニャは険悪な雰囲気だったとさ(あ、いつもの事か)
おわり
え〜・・・・・・なんだかDQ4の冒険日記は大きく路線変更したみたいです。・・っていうか、いいでしょう?どうせ後半になって行くにしたがってどんどんどんどんどんどんどん暗くなるんだから・・・・今のうち、今のうち・・
さあ洞窟の最深部へ辿り着いた勇者一行。そこで勇者達が手に入れたのはアイテム「信じる心」だったんですね〜。これで人間不信に陥ったホフマンを改心させ、馬車を手に入れる事が出来たのです。こうして勇者達はマンドレイク砂漠を超える事が出来たのでした。
続く
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