ドラクエ4冒険日記H

マンドレイク砂漠を超えると温泉町アネイルに着く。そこで天空の鎧の情報が聞けます。何でも鎧は魔族の手によって海に投げ込まれたらしい。ふーん。天空の鎧は海の何処かにあるってことね。

更に南下するとコナンベリーの街。そこでトルネコとアリーナたちの情報が。うー・・・トルネコはともかくアリーナか・・早く会いたいね。続けて情報を集めていくと、なにやら最近近くの灯台の種火が尽きてしまっていて漁がままならないらしい。加えてトルネコという富豪が船を出せなくて困っていると。別にほっといてもいいのだがここは我慢して大灯台へ。

そこにトルネコはいますね。生意気にも彼は、今やエニックスの看板キャラです。本当に生意気ですね。(といってもトルネコの大冒険、私は大好きだが)勇者一行は、そんな困っているトルネコに協力して塔の頂上に巣食っていた灯台タイガーその他(懐かしい・・)を倒し、トルネコを仲間に、加えてトルネコの船を手に入れるのでした。さあ航海だ。物悲しい曲をバックに、海を南下したくえすと達はミントスの町に到着。

ミントスでは宝の地図を手に入れる事が出来ますね。なにやら地図の右上にバッテン印がされているんだけどこの時点ではその地点にいけないらしい。どうやらこれは冒険の後半にならないと行けないようですね。気になりますがここは諦めて今出来る事をやってしまおう。ミントスをぶらぶらしてみる。すると宿屋の中でクリフトが病に倒れていた。

来たッ


・・そこにいたブライの話によるとアリーナは一足先に特効薬の「パテギアの薬草」を探しにいったらしい。うーん男勝りでステキです。ブライを仲間にし、くえすとはミントスの西に向った。しばらくするとソレッタ城へ。ソレッタ王の話ではパテギアはもう絶滅、昔先祖が種を南の洞窟に封印したのだが最近魔物が巣食っていて近寄れないらしい。じゃあ俺たちが取ってきてやる。あー、説明的な文章は肩が懲ります。

ソレッタ南の洞窟。ここでモンスターが急激に強くなる。イエティ、、コンジャラー、マージマタンゴ、極めつけがじごくのよろい。体力の無いミネアさんはこの地獄の鎧に何度も瀕死に追い込まれます。うー。ミネア辛いなー、この体力じゃ。でも、外さないよ。洞窟を進む一行。すると先にパテギアを探しに来ていたアリーナ姫がいた。しかも他人と別パーティーを組んでだ。・・・・SHIT!!

え〜。

SHITと嫉妬を掛けて見ました。すみません、もう言いません。今回はナニやらテンションが低いですが気にしないで下さい。

・・話を戻します。アリーナ一行に先を越される訳には行かないくえすと達。動く床のトラップを何とか潜り抜け、とうとうパテギアの種を手に入れた。ソレッタで調合してもらい、さあこれでクリフトが助かるはず。

ミントスに戻ってきたくえすとはこのパテギアの薬草でクリフトを回復させると念願のアリーナ一行が仲間に。揃った。役者が揃った。くえすと、アリーナ、マーニャ、ミネア。ピサロ討伐の一軍がとうとう揃いましたよ。いくらミネアが弱かろうと、マーニャがMP浪費家であろうと、ライアンがまだ仲間になって無かろうと、私はこのパーティーを貫き通すよ。何があっても変えません。ここに今、宣言致します。

さて心強い仲間、アリーナです。肉弾戦では本作で間違いなしの最強、アリーナ。来ましたね、強いですよやっぱり。HPは高くて動きは速くて攻撃力も高くて会心の一撃連発。正にゲームバランス崩壊モノの強さ。そしてプリンセス。なんと言ってもプリンセス。おてんばプリンセス。何が、どう『おてんば』なのか考えるだけで胸が切なくなる、おてんばプリンセス。ドラクエの同人世界で一、二を争う人気のこの彼女、当然私も大好きです。

え〜みなさん。「プリンセス・アリーナ」という漫画をご存知でしょうか。そのタイトルの通り、アリーナにスポットライトを当てた漫画らしいのですが、これがま〜何とも萌えるらしいのです。可愛いらしいのです。読みたいです。正味な話、読みたいです。突き詰めて言うと、読み耽りたいです。まあ端的に言うと読み漁って妄想に耽りたいです。まあもっと極論すると読みながらハッスルしまくりたすみません、これ以上はとても私の口からは言えません。

で、あの、無いんですが。無いんですが「プリンセス・アリーナ」。どの古本屋を探しても無いのですが。オークションにも無い。読みたい読みたい読みたい・・と無いものねだり精神爆発。これは脳内妄想で我慢するしかないなってことで「わたし、アリーナ」。どうぞ。





『わたし、アリーナ。』

「でも・・びっくりした!まさかあの時のあなたが勇者様だったなんて!」

快活に話しているのは、さっき俺の施した薬で回復したばかりの青年神官と、ブライのリーダーである女の子。
年は俺より下ではないだろうか。それならば仲間の中で最年少と言う事になる。
・・でもただの少女ではない。あの時――あのソレッタ南方の洞窟内で垣間見た彼女の殺気。
その殺気が彼女の小さな身体に充満されて一気に弾ける瞬間、俺は恐怖を覚えた。
もう少しその殺気の出所が人間の・・しかもこんな小さな女の子のものであると気付かなければ、お互いただでは済まなかった筈だ。


「ねえねえ、勇者君!そういえば名前をまだ聞いてなかったね!わたしはアリーナっていうの。
このお爺さんが・・あ、そうか。ブライはさっきまで君たちと一緒にいたんだよね。
・・で、君たちが助けてくれたこの情けない僧侶がクリフト。二人ともわたしの友達よ。」

「な・情けないなんて」

「情けないでしょ?」

「・・はい情けないです・・」

「まあまあ・・そんなに苛めたら可哀相よ。あ、あたしはマーニャ。よろしくね。
で・・今外で馬車を見ている娘が妹のミネアで一緒にいるおっさんが商人のトルネコ。」

「よろしく!で、君は・・」

「くえすとだ。よろしくな。」

「くえすと君か・・よろしく!」

「ねえねえ、でもさあ、くえすと。アリーナって・・どこかでその名前、聞いた事無かったっけ?」

「え・・そうか?」

「確か・・エンドール辺りで聞いたような覚えがあるんだけど・・」

「・・ドキ。き・気のせいじゃないかしら?マーニャさん!」

「うーん・・ねえ、ブライさん、あなたたち・・エンドールには行かなかったの?」

「それはですな・・ゴホン」(チラリ)

「い・・行ってないよ、そんな所!ねえクリフト、ブライ?」

「はい!行ってないですひめ・・あ、アリーナ!」

「フム・・。確かに行ってないですな。エンドールは名前を聞いた事しかない所ですよ、マーニャさん」

「そ・そう・・気のせいかな?まあ、いいや!折角こうやってあたし達導かれたんだし!飲もう!じゃんじゃん飲もうよ!」

「い、いえ僕達は・・僕は僧ですし、ブライは飲めないし・・アリーナ様はまだお歳が・・」

「へえ。アリーナ“様”?」

「イ、イエ!アリーナ・・あ・ありーなはまだ16歳だし・・・・・・・な・なあ、あ・あ・あ・・ありいな?」

「・・そうね。わたし達は遠慮しておきます。マーニャさん、遠慮なく飲んでよ!」

「うーん、そう?くえすともお酒飲まないし・・寂しいけど、じゃああたし一人で飲ませてもらう!」

マーニャは頼んだビールジョッキ五杯の一気飲みという離れ業を実現し、一瞬のうちにいい気分になっていた。

「それにしてもさあ!ビックリしたよねくえすと!アリーナのさあ、あの洞窟で見せた殺気!
暗い洞窟の中でまるで閃光が走ったみたいだった!アリーナちゃん、あなた、相当強いんでしょう?ねえねえ!」

「ど・どうかな。強いとは・・思うけど。でもわたしより強い人なんてゴロゴロいると思う。」

「うーん、そう?」

「うん。特にくえすと君。あたしもあの洞窟でくえすと君を初めて見た時・・ううん、
殺気を感じた時体中に震えが走ったもの。
一瞬でも人間と気付くのが遅れたら、あたしあのまま突っ込んでた。」

「ああ、それは俺も同じだ。危なく仲間同士でやりあう所だったな」

「ふうん、へええ。このくえすとの殺気、ねえ。私たちがくえすとに始めて会った時、コイツなんてど〜しよ〜もない臆病者だったのよ?」

「え?嘘・・。信じられない」

「ホントホント!!ねえ、くえすと?」

「まあ・・そうだったかな」

「て〜んで弱虫でサ!!情けないったらなかったわ!アハハハハ!!」

「む・・まあお前の軽薄さは会った時から変わらないがな」

「・・・・・なあによ?」

「なんだよ」

「カ―――!!ムカツク!こんなのが強いなんてムッカツク、納得できな〜い!
ねえそう思うでしょ、えーと、クリフト君!!」

「え?え?」

「え?え?・・じゃない!・・なあんかアタシ一人酔っ払ってバカみたいじゃない。クリフト君!飲もう!一緒にのも〜!!」

「わ!!ダメです!僕は僧侶ですから!飲めません!」

「い〜じゃない!ソウリョがのんだって!ほら!飲んだのんだ〜!クリフト君カワイイからアタシが飲ませてあげる〜!!」

「・・わ!・・・ガボ!!・・・ゴボ!!」

「あーあ・・クリフト、お酒の臭いだけでもダメなのに・・」

「な〜んだ飲めるじゃな〜いホラホラ!一気!一気!アハハ!」

「ゴボゴボゴボ!!くる・・・し・・!!」

「可哀相にクリフトさん・・ああなったらマーニャは止められないよ・・」

「フ〜!!一気完了!!どう?美味しかった?」

「・・・・・ヒック」

「ちょ、ちょっとクリフト!?顔が真っ青!大丈夫?」

「らいじょ〜ぶですよありいなサマ・・わはは!・・・・・ヒック。」

「ン?またアリーナ様って・・」

「う・ううん!クリフト、酔っ払ってるから!・・さ・さあ!わたしが部屋まで運んでいってあげる!クリフト、行くよ!」

「う〜ん・・・うふふ、アリーナさま〜・・ひっく。・・・姫さま〜このクリフトカンゲキでっす・・・ぐふ!うふふふふふふ!!!」

「アリーナ・・・“姫”・・・?」

「うう・・聞き間違い、聞き間違い・・」

「姫って・・・・え?あれ?」

「マーニャさん、わたし、お、お酒のもうかなあ!えへへへ!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「す・すいませーん!ビール二つくださ〜い!」

「アリーナ姫、アリーナ姫・・・・うーんどっかで聞いた・・・・・。」

「・・・・。マーニャさん!ほら、ビール!飲みましょう飲みましょう!」

「・・・・・あ。」

「ぐびぐびぐび・・ああ、お・美味しい!」(ニガー)

「あ、ああああ!そうかあ!」

「びくうっ!・・・・マーニャ・・さん?」

「思い出したぁ!アリーナ姫!!」

「――――――。」(あ〜・・ばかクリフト・・)

「くえすと!アリーナ姫!アリーナ姫よ!!」

「・・・・・・?」

「ほら!武道大会優勝者の!」

「・・・・・・・・・・あ。」

「思い出した!?エンドール城で聞いた武道大会優勝者!
初出場でいきなり優勝かっさらったお姫様・・確かアリーナって名前だった!」

「そうだ。俺も今思い出した。そうか、アリーナさん。あなたがあの・・」

「ち・ちが・・

「そうです!!ここにおわすこの御方は・・!!サントハイム王国姫君の!!!アリーナ姫です!ほ・本来であるならば・・・

「く・クリフト!!ダメ!!言っちゃ駄目!!」

「モゴモゴモガ・・・」

「・・もう遅いですな姫。」

「ブライ・・・」

「うんうん!栗色クリクリ髪の毛!凄く可愛いくて小柄!でもその外見うらはらの滅茶苦茶な強さ!
・・間違いない、聞いたとおり!そう、あなたがあのアリーナちゃんか・・・」

「・・・・・うん・・・・そう。わたし・・サントハイム王女のアリーナです。・・・隠しててごめんなさい、くえすと君」

「いや・・。でも俺も驚いたよ・・あ、こんな言葉遣いじゃ失礼かな・・」

「ううん!いいの!わたしは王女って事でみんなに気を使われるのが嫌だったから!」

「え〜何で?いいじゃない、チヤホヤされてさ」

「・・・ううん。わたしは昔から姫って言われるの凄く嫌だった」

「どうして?いいじゃないお姫様・・うっとりするくらい羨ましい・・」

「お父様とお母様・・それに従者達はいつもわたしに“女の子らしく”“お姫様らしく”“貞淑に”って言いつづけた」

「あ・・・・それ、あたしムリかも。」

「でもわたしはそんな窮屈な生活が嫌で・・逆に歴戦の戦士たち・・世界を救った伝説の勇者たちに憧れて・・憧れているうちに自分も強くなりたくなって・・」

「・・・・。」

「・・・・。」

「とうとう1年前、お父様が言うのを聞かずに城を飛び出しちゃったの。
このブライとクリフトを連れて。そうしたら・・その合間にサントハイムが滅ぼされて・・多分・・ピサロに・・」

「・・・・。」

「・・・・。」

「わたしがワガママ言わないでサントハイムに残っていたら・・そんな事にはならなかったのに・・
わたしのワガママで・・貴重な戦力のブライとクリフトを強引に連れてきちゃったから・・」

「・・それは違いますな姫。止められなかったわたくしにも・・

「ううん、ブライ・・ブライ達は私の言う事には絶対逆らえないと踏んで連れてったんだもの」

「・・・全てを御自分のせいにするのはお止め下さい」

「・・聞いて。それでミネアさんに言われて・・ピサロやそれにエスタークがみんなの共通の敵だって教えられて・・
これは運命だと思った」

「・・・・・。」

「・・・・・。」

「・・・・・。」

「だから・・だから・・・・王女だなんて特別視されないように・・わたしはみんなの本当の仲間になりたかったから・・だから・・だから・・・・」

「うん、わかったよアリーナ、もういいよ、よく分かった」

「わたしは・・わたしは・・」

「エライ!!!」

「ア・・!!」

マーニャがアリーナに正面からの思い切り熱い抱擁をかましていた。


「エライ、エライエライエライ!!アリーナちゃん、今あたし痺れたわ・・心の底から痺れた!本当に、ほんと〜にエライ!!」

「マ・マーニャさん・・くるし・・・!」

「アリーナちゃんはわたし達の仲間!!これ以上なく心強い、可愛い仲間!!ね、そうだよね、くえすと!」

「うん、そうだな、アリーナはたった今から俺たちの仲間だ。王女でもなんでもない、俺たちと運命を共にする戦友だ」

「くえすと・・くん・・ありがとう・・ぐすっ・・・」

「うんうん!そうと決まったら辛気臭いのはなし!さあじゃあんじゃん飲むわよ〜!
ほらクリフト君、ホラホラ・・・・あ。寝てやんのコイツ」

「あは・・あはは!クリフトはいつもこんな感じ!
戦闘で倒れるのも、旅の途中で音を上げるのも、夜寝るのも全部クリフトが先!
まだまだ子供・・でも、傷ついた私を回復してくれるのもクリフトが一番最初!」

「アリーナちゃん」(い・いやだ・・アリーナちゃん、大粒の涙を浮かべて・・今にも泣き出しそうじゃない・・)


「ブライは・・ブライは・・いつも私のことを・・ううん、クリフトのことも・・心配し過ぎるくらい心配して、
私たちを危機から救ってくれる、頼りになるおじいちゃん!」

「恐縮で御座い・・・・・く。」(さめざめ)

「頼りないリーダーのわたし、に・・いつも・・いつも・・」

「ダメ!アリーナちゃん泣くな!泣いちゃ・・だめだっ・・」(じわ)

「わたしのワガママを・・いつもいつも・・・優しく包・・・うう・・」

「ひ・・・・・・・・・め」(うう、泣くな、泣くでない!このブライ、ここで泣いては一生の・・・・くッ)

「包んで・・くれ・・て・・・うっ・・・うっ・・うわぁ・・・うわぁぁぁ・・・」

「ハ――――――――ッ!!あり・・ありありあり・・」(アリーナさまっ)

「アリーナちゃんっ」

「ありがとうって、いつも言いたかった!!ブライ、クリフト!!うわあ・・・!!うわあああ――――ん!!わあああん!!」

「うん!うんうん!・・・いい娘・・とってもいい娘!・・グス。
今まで、本当は辛かったのよね・・?悔しかったよね・・?
・・・ヒック・・サントハイムが襲われた責任を・・ずう〜っと一人で、しょいこんで・・ハグ・・・・
旅の途中でクリフトが倒れて・・心配して・・凄く心配してっ・・ぐず・・・
張り詰めていた緊張がくえすとに出会って・・一気に緩んだのね・・よしよし・・うんうんうん・・」

「うん・・そうだろうな。俺だって今までの旅は必ずしも順調だった訳ではない。
・・心の中でこんな苦しい旅なんか放り出して、とっとと逃げ出したいと思う事もあったしな。
ましてやアリーナは女の子だ。16歳・・だっけ?無理もないな。それに・・」

「すう・・・・すう・・・・」

「あら・・・この娘、寝ちゃった。ほ・本当に可愛い子ね・・うう・・」(感涙)

「それにこの子の両親、生きているか死んでいるかも分からないんだろう?
・・・想像を絶するよ。辛かったんだろう、本当に」

「・・アリーナ様はそれでも、今まで一度も我々に涙を見せる事はありませんでした。
心配を懸けたくは無かったのでしょうな。本当にお強く、お優しい・・うう・・・気高い方・・です。」

「ブライさん・・」

「・・・・・・・・くえすと様。」

「はい」

「アリーナ様はやはりまだ16歳の少女です、脆い所もあります・・
しかし気性が激しく、ひとたび荒ぶればとても我々では止められない時がある・・
我々も細心の注意は払います、ですが・・」

「はい、分かっています。俺が責任を持ってアリーナさんを護ります。」

「あ、ああ・・有難うございます」

「いえ。もうこれ以上犠牲を増やす訳には行かないんです。少なくとも俺の目の前では絶対、誰も死なせはしない」

「・・・・・我々の命、くえすと様にお預けします」

「はあーあ・・アリーナちゃんにもらい泣きしちゃった・・でもあんた、そんな大胆な宣言しちゃっていいの?
フーーン、どうせ、あたしが危ない時は見捨てるんでしょ?」

「護るよ」

「・・・・。」

「誓って言う。誰かが死ぬときは、俺が死ぬ時だ」

「・・・・。」

「誰も死なせはしない。」

「わ・分かったわよ。そんなに睨む事無いじゃないのさ・・」

「何があっても・・」

「・・・・。」

「何が・・あってもだ」

「分かった分かった!あ〜あ、何か酔いが覚めちゃった。わ・わたし、もう寝よーっと!」

「それではわたくしも・・クリフトはわたくしが運びますので・・」

「分かりました。じゃあ、マーニャ。アリーナを頼めるか?」

「はいはい。・・ねえ、くえすと。」

「何だよ」

「お休み。それと・・・・・・・カッコつけるな、このアホー!!」←絶叫を残し二階へ駆け上がるマーニャ

「・・お休み。ブライさんも」(最期まで口の悪い奴・・)

「はい、それではまた明朝」









数時間後・・アリーナの寝室。


ふっと・・・目が覚めた。・・アレ?わたし、寝ちゃったのか。

・・・・・・。

あ〜あ・・・泣いちゃったな。ブライにカッコ悪いところ見せちゃったかも。
泣くなんて久し振りだからな。ちょっと悔しい。夜風にでも当たろう・・


アリーナは部屋のベランダに出てミントスの遠い町並みを眺めた。

意外だったな・・こんな所で勇者様に出会えるなんて。
ふふ、でもくえすと君、「勇者様」なんて感じじゃないのよね。
わたしが想像してた勇者とは印象が全然違う。年だってわたしとそんなに変わらない筈。
でも何か・・何故か、あの眼を見ていると全て任せられるような感じがするのよね・・不思議だな。
・・あたしには出せないな、ああいう雰囲気。マーニャさんも、何だかんだ言って・・くえすと君を信頼しているみたいだし。

・・・・・・・。

・・・・・・・ん?くえすと君?

アリーナの部屋の窓の外からくえすとが剣を振っている姿が見えた。

ふーん・・やっぱり努力してるんだなあ・・

・・・・・・・。

ちょっと・・話し掛けてみる?


アリーナは宿屋から出て、くえすとの元に近づいていった。
近づくたびに伝わってくるくえすとの放つ熱気、迫力がアリーナを徐々に怯ませてゆく。
そして後10メートル位・・の所まで近づいた時、とうとうアリーナの足が止まった。
その迫力に、足を止められたと言うべきか。

・・凄い。凄く集中しているな・・ちょっと、怖いかも。
・・・・・・・。
・・・ううん。
・・・・これは・・・
・・一体・・これは・・・


ブルっとアリーナの身がすくむ。・・ここまで近づいて、ようやく気が付いた事がある。
くえすとは剣を振るいながら、何か言葉を呟いているのだ。
ここでははっきりと聞こえない。

「――――。」


その姿に魅了された形のアリーナ。どこかおぼつかない足取りでくえすとに近づいていく。

「・・・・・・ロ・・・・・・・・て・・る・。」

「・・・・・・・・・・・・・・ろ・・・てやる」

・・・・何て・・・言ってるんだろう。

どんどん近づく。・・・怖い。得体の知れない恐怖がアリーナをゆっくりと覆っていく。でもアリーナは止まらない。
今度は、止まれないのかもしれない。

「サ・・・こ・し・・・・・やる・・・」

・・・・・・。

「ピ・・・・・・しや・・・・」

・・・・・はあ・・・はあ・・はああ・・・


近付くたびにアリーナの呼吸は荒くなってゆく。

ア・・・ハア・・・・ハァ

「ピ・・・ロ・・・・・ろ・・て・・・る」

ハア・・ハア・・ハア・ッハアア・・・フウゥ・・・



そしてあと数歩の所にまで近付いた時
そのくえすとの呟きがアリーナの耳に克明に鳴り響いた
それはまるで恐ろしい呪詛であるかのような
禍々しい呟きだった




               

               サ 
               ロ
                 。 
               


               殺 
               し
               て   
             や             
                 る  







「―――――――――!!!」


あ・・・聞こ・・・どうし!・・嫌・・・・怖い・・・・
息・・・息が・・・できないよっ!
どうし・・・どうしてっ!?苦し・・・!!苦しい―――!!!

「ん・・・・誰かいるのか・・・・・・・・・・・・・・アリーナか?」

「ハア!!!ハア!!ハア!!ハ――――――ッ!!!」

呼吸が止まると思ったその瞬間!!
私は胸が圧迫されるような息苦しさを間一髪で解放し、思い切り息を吐き出し、吸い込んだ!!


「ハ!!・・・・ハア!!ハアアア!!ゴホッ・・ゴホゴホ!!」

「お・おいアリーナ!どうした!」

「ウ・・・ハァ・・・・・・・ウ・・・・ハァァ・・・・ウうん・・・・・なんで、も・・・」

「なんでもって・・体中汗だらけじゃないか!顔色も!真っ青だよ!」

「ううん・・ほんとうに。本当に大丈夫。・・・・ふう・・・ふうう・・・。」

・・死ぬかと、思った。でもくえすと君の心配そうな眼を見ている内に、わたしの呼吸はだんだんと安定していく。あの圧迫感は一体・・何だったのだろう。


「・・ごめんなさい。なんだか稽古の邪魔をしちゃったみたい」

「いや、それはいいんだけど。本当に大丈夫か?」

「・・うん。ほら、もう顔色もいいでしょ?」

「・・・ビックリさせないでくれよ」

「ふふ・・本当にごめんね」

彼はそれでも心配だったのか、大丈夫だからと言うわたしの言葉を制して・・わたしを木の幹に寝かせてくれた。

「凄く・・心配性なんだね」

「心配だからな」

「でも、ありがとう。暫く休んでいるから、稽古続けていいよ?」

「いや。一区切りついたし、暫く休憩するよ」

「うん・・じゃあ一緒に休憩しよう」

彼はわたしの横に腰を下ろし、タオルで体中の汗を拭った。
未だに彼から放たれてくる熱気は凄まじく、息苦しさを感じるくらい。
わたしの引いた汗も何だかぶり返してきたようだ。
そしてその熱気が冷めてきた頃・・今度は二人の間に流れる沈黙を息苦しく感じるようになった。
いや・・まだわたしは恐れているのかも知れない。あの時彼が見せた、狂気とも呼ぶべき恐ろしい殺気を。


「・・・・。」

「・・・・。」

「・・・・。」

「はあ・・・」

「ん?」

「ううん・・」

「・・・。」

「・・・。」

・・やっぱり、わたしよね。わたしが勝手に来たんだから、わたしから何か話さなきゃ。
・・そうだ。邪魔しちゃった事を謝ろう・・あ、もう謝ったか。
うーん・・かといってこのまま二人で黙っているのもなんだし・・でも、どうしよう。
困った・・クリフトやブライだったら、こんな事で悩まないのにな・・

「今日、あまり星が出てないな」

「ん!うん、そうだね・・」

「・・・。」

「・・・。」

「・・・。」

「・・・。」

あ〜・・・・・これ、彼も絶対気にしている・・何とかこの沈黙を脱しようと、
きっと考えに考え抜いて彼は天気の話題を振ってきたんだ・・う〜。申し訳ないな・・・
なんだか彼にも気を使わせちゃっているみたいで。う〜ん・・・こ・こういう時は共通の話題。
二人共通の話題を振って、話を盛り上げていかないと。
じゃあ・・・でも、共通か・・・共通って言ったら・・今だったら・・そう、共通の知人の話ね。
うん、話題に詰まったらまずは共通の知人ネタ。よし、これしかないっ


「マーニャさんとは・・いつもどんな話をしているの?」

「え?マーニャ?別に話はしていないな。マーニャはミネアといつも話をしているから。俺とは喧嘩ばっかりだよ」

「そ・そうなんだ」

「うん。それが何か?」

「いや、ホラ・・くえすと君とマーニャさん、何か仲がよさげだったから・・」

「いや。口を開けば喧嘩ばかりだよ」

「そう・・」

「うん」

「・・・・。」

「・・・・。」

「・・・・・。」

「・・・・・・。」

ダメだった・・・ふう、上手くいかないものね。
っていうか・・話をするたびにどんどん気まずくなっていってるような・・あ〜来なきゃよかったかも。
ここに来ないでベッドで寝ていればよかった。
・・・・。
わたしらしくないな・・なんか。全然わたしらしくない。もう、いいや・・寝ちゃえ。
わたしが寝るって言えば彼もそうだなって言って・・うん、そうしよう。
部屋に戻るまでがまた気まずいけど・・しょうがないか。


「じゃ・じゃあわたし・・部屋に戻るね」

「うん。じゃあ俺は続きをするから」

「え?まだやるの!?」

「もう少しやってから俺も寝るよ。アリーナ、お休み。」

「・・・・・・。」

「どうしたの?」

「え・・・いや・・どうしてそんなに・・・・」

「頑張っているのかって?」

「・・・うん」

「自信が無いからだよ。このままじゃ君たちを護っていく自信が無いから」

「わたしたちを、護る?」

「そうだよ。ブライさんにも君の事頼まれたし」

「え・・・」

「俺だって、もう二度と目の前で人が死ぬのを見たくないしね」

「目の前で・・・」

「言ってなかったっけ?俺はね、自分の故郷をピサロに滅ぼされたんだ。
“勇者”である俺を護る為にね、村のみんなが犠牲になってしまった」

「・・・・。」

「俺はその時何も出来なかったから・・だから二度とあんな思いをしないよう、極限まで自分を鍛えておきたい。それだけだよ」

「・・・・。」

「自分だけではなく、他人を護れるようになって始めて勇者と言えるからね」

「・・・・」

「・・・・」

「・・・・」

「?」

「・・・・・。」

「どうしたの?」

「・・・・・。」

「アリーナ」

「わたしも・・」

「うん?」

「わたしも・・やっていって、いい?」

「・・?稽古を?」

「うん」

「ああ、別にいいけど・・よし、じゃあ一緒にやろうか!」

「うん!」

この日からわたしたちは夜の決まった時間、一緒に稽古をするようになった。
彼のあの言葉を聞いて、わたしも・・他人を護る事の出来る、強さを手に入れたかったから。
わたしだってあんな思いをするのは二度と嫌だからね。
・・でも・・彼が見せたあの異様な・・始めて会った日の稽古でくえすとが見せたあの・・凄絶な殺気はあれから一回も見ていない。あれは・・何だったんだろう?あの圧迫感は一体・・・ピサロへの怒り、それは分かっているんだけど・・。

でも・・・


わたしは、その時知らなかった。


彼には昔恋人がいて、その恋人が彼の身代わりになって死んで行ったという事を。
知らなければよかったんだ、そんな事。




知らなければ、わたしはあんなにも苦しむ事は無かったのに。

冒険日記Iへ続く

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